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情報とは何か メディアとは何か

簡単に言えば、情報を媒介する1)ものがメディアです。情報とメディアの関係性は簡単に理解できます。ただ、本稿は、情報の特性とメディアの特性を理解するためのものです。

情報の定義

まず、情報の定義について理解しましょう。

図1 考えてみよう
いま、道を歩いていたらこんな標識を見かけたとしましょう。

この標識はいったい何を意味すると思いますか?
答えは簡単です

答え.無意味

では、この無意味なマークはなんでしょうか?これも答えは簡単ですね。

答え.ただの図

このような、無意味なマークや図は「情報」とは言いません。では、情報とは何か。

図2 考えてみよう

https://www.irasutoya.com/
では、道を歩いてたらこんなものを見かけたとしましょう。
たいていの人は止まりますよね?たいていではありません。すべての人が止まることになっています。なぜしょうか?

理由は簡単ですが、深いですね。赤信号が「とまれ」の意味を持っていることを知っているからです。もっというと、赤色の信号は「とまれ」と定義されている、と言えます。
このように、ある図や文字、ジェスチャーやサインのようなデータ2)に「とまれ」などの付加価値が付いたものを情報といいます。

このように、記号に付加価値(つまり特別に意味を与える/付与する)を付けるという考え方は、科学的な思考であり、数学的な思考とも言えます。
たとえば、中学3年で習う因数分解では、
x4+15x2+56
という式が与えられたときに、
A=x2とおく
なんてことをしたでしょう。これは、Aという記号にx2という意味を付与したといえます。また、口をすっぱく言われたことには、「自分で置いた文字は必ず明記するように」とも言われたことでしょう。
つまり、記号に意味を持たせる場合は、「どのような意味か」を記録する必要があります。
Aというデータはx2という意味を持たせた情報であり、情報は記録する必要がある とも言えます。

情報の特性

今度は情報の特性について見てみましょう。
上の項でも述べた通り、情報は記録されて初めて役に立ちます。信号の例で言えば、道路交通法に赤信号の意味が記録されているので役に立つわけです。このように、情報は記録されて初めて他人の目に届く(耳に入る)ということが言えます。
では、記録された情報にはどのような特性があるか、ということがとっても大事になってきます。

1.情報には形がない

実は、情報には形がありません。信号機の例で言えば、信号機は情報を発信するモノですが、赤信号には実体がありませんね。
どういうことかと言うと、宇宙人と街中を散歩しているときに、信号機を見かけたとします。地球人だろうが宇宙人だろうが、信号機を見たら、「こういうモノなのね」と実体をとらえることができます。赤信号を見たらどうでしょう?私たちは「とまれ」の意味だと思っていますが、宇宙人からすると「飛べ」かも知れません。

一番最初の無意味な図を思い出してみてください。本来であれば、どんなサインだろうが記号だろうが、人間が意味を持たせなければ「無意味な図」でした。このような無意味な図のことを「概念3)」と呼んだりします。赤信号も概念です。赤信号と聞くだけでは、ある人は歩行者信号を思い浮かべますし、ある人は横並びの信号を思い浮かべるでしょう。このように「形はまちまちだけども、色だけは赤と決まっている」というように1つの特徴だけを抜き出して表現することを「概念」と言います。

そして、「概念(無意味な図)」に意味を持たせたのが情報なので、「情報には形がない」と言います。

2.情報は消えない

情報は消えません。またもや、交通ルールを例にとりますが、横断歩道にお巡りさんが立っているとします。そして、そのお巡りさんは歩行者の人にチケットを配ります。チケットには「すすめ」と書いてあります。歩行者は「すすめ」のチケットをもらったら横断歩道を渡ってよいこととします。
さて、突拍子のないたとえですが、これは本当に重要なことです。
歩行者とお巡りさんのチケットのやり取りに注目しましょう。お巡りさんは歩行者に「チケット」を配るたびに、手元からチケットが消えていきます。で、横断歩道を渡った歩行者は用済みのチケットをゴミ箱に捨てるでしょう。このように、物理的なモノは相手に渡すたびに消えてなくなります。まぁ、手紙やハガキも同じですね。相手に送ると自分の手元からは消えるのです。
では、情報はどうか。情報というのは「形のないもの」でした。形が無いので渡すことができません。渡すことはできませんが、表示することはできます
表示することができるということは、これを受け取る作業が必要ですね。このように表示する側と受け取る側のやりとりのことを通信といいます。で、お互いが通信するのは同じルールを知ってる必要があります。お巡りさんは「赤信号はとまれ」のルールを知っているし、歩行者も「赤信号はとまれ」の意味と解釈します。このように、通信する上で大前提となるルールのことをインターフェースといいます。ここでは、「赤信号はとまれの意味とする」というルールがインターフェースです。このインターフェースの設計というのはとっても大事になってくるので、たぶん重要な用語でしょう。
お巡りさんと歩行者という全く立場の違う人同士で、インターフェースができあがっていると、お巡りさんは物理的なチケットを渡す必要なんてまったくありません。ただ赤いライトを歩行者に向けて照らせば良いのです。このとき、歩行者にいくら赤いライトを当ててもお巡りさんの手元からライトが消えてなくなることはありません。これを、「情報は消えない」と言います。

3.複製が容易

情報はコピーが簡単にできます。ここで注意が必要なことは、情報をコピーしても情報であるということです。またチケットをコピーしたらチケットでしかないということも大事なことです。
例えば、お巡りさんが「とまれ」のチケットを配っているとして、ある歩行者が大声で「この横断歩道はいまとまれだよ!」と叫んだとします。これは、チケットというモノから音声という情報に変換したと言えます。この行為はコピーではないということに注意してください。コピーのことを複製といいます。
チケットを複製するには印刷などの手間がかかります。
では、お巡りさんが「赤いライト」と灯していたときに、ある歩行者が大声で「この横断歩道はいまとまれだよ!」と叫んだとします。これは、赤いライトという情報から大声という情報にフォーマットの変換が行われただけで、複製行為と言えます。また、そのままの姿を複製したければ、歩行者は同じように赤いライトを照らせば良いのです。
こういった事から、情報は「複製が容易」と言われるのです。

4.容易に伝播(でんぱ)する

情報は女子の噂が如く伝播します。2.情報は消えないで述べた通り、情報を発信する側は「表示するだけ」で良く、受け取る側は「見れば良いだけ」というとっても簡単な仕組みになっています。簡単な仕組みであるからこそ、インターフェースが重要なのですね。インターフェースがしっかりできていないと、いくら表示しても受け取る側が正しい解釈ができなければ意味がありません。
裏を返せば、インターフェースがしっかりできていれば、情報発信者は「表示するだけ」で大多数の受け取る側に瞬時に伝わることになります。このことを「容易に伝播する」といいます。

メディアの特性

いわゆるマスコミュニケーションやメディア論と呼ばれるものは、わりと国語の教科書で採用される事が多いですね。国語の教科書で書かれている事の多くは「メディアの役割」または「メディアから流れる情報の捉え方」に焦点が当たっています。これを情報分野の側面から言い換えると、「世論と個人のインターフェースの整合性」について語られることが多いように思います。

世間で何か事件や事故が起きたときに、まず記者が取材をして、その要約を記事にする。読者は結局のところ要約を知っているに過ぎないが、それはあくまで「記者」というフィルターを通した物の見方の1つに過ぎない

というような内容を目にしたことはあるかと思います。
ですが、情報科目で扱うメディアというのは、物の見方の1つに絞った正確なやりとりに重きを置きます。何度も出てきますが、通信におけるインターフェースの役割は、100%同じ内容を相手に伝えることにあります。
というわけで、メディアにおけるインターフェースについて焦点を当てることにしましょう。

1.メッセージの伝達手段

誰かの思いや漠然とした抽象的なものは、「文字」や「音声」の方が伝わったりします。古来から人の思ひというのは、短歌や和歌にされることが多かったですね。また、紫式部は恋心的なものを長編小説という形で世の中に残しました。文字に比べて、音声を記録して再生するというのは歴史は浅いですが、ラジオのヘビーリスナーの中にはテレビより人情が伝わるなんていう人もいます。また、携帯電話が普及すると、メール大好き人間なんてのが現れて、(何と比べたのかは知りませんが)メールの方が気持ちが伝わる、なんて人も多く居ました。このように、思いの丈のようにメッセージとして残したいものは「文字」や「音声」が使われることが多いです。

2.事象や事実の伝達手段

人間あまりに慌てていると「とにかくこっち来て!!」なんて言いますが、言葉(つまり「文字」や「音声」)で伝わらないことは現場の生を見て欲しいという気持ちになります。「文字」だけでは伝えきれない情報は、静止画や動画で伝えた方がよっぽど印象に残りますね。小説よりも、漫画や映画の方が「見応え」という意味では大きいような気がします。

3.まとめ

このようにメディアは適宜最適な手段をもって情報を伝達する必要があります。これはハード4)でも同じですね。例えばワープロを自動で打つロボットは腕さえあれば良いのです。必要最小限のものを使って効率的に情報を伝播させます。ちなみに、情報を伝播するものがメディアと定義すれば、信号機も交通ルールを伝播するメディアとも言えます。
メディアの特性を通じて、情報科目で一番得たいサッジェション5)は、目的に応じた手段を選択する必要があるということです。

蛇足

フォーマットの変換

フォーマットというのは、形式のことです。形式の対義語は「内容」ですね。同じ内容でも「形式」が違うことはよくあります。例えば、同じ言葉でも「音声」という形式で伝えたり「手話」という形式で伝えたり「点字」という形式もあります。言葉というのはある意味では情報ですから、いろいろな形式で他人と通信することができます。
ただし、形式が違うと相手に伝えることが不可能なシーンも出てきます。厳密に言うと相手が解釈できない場合があるということです。
インターフェースは情報を発信する側と受信する側の「取り決め」のことを指します。この取り決めの中で、「音声」で伝えるというようなフォーマットの取り決めを行うこともあります。そして、受信した側がさらに第三者に情報を発信するとき、そこには別のインターフェースが存在し、「手話」で伝えるというフォーマットの取り決めがあるとしたら、フォーマットの変換(翻訳)が必要になります。このように、誰から受信し、誰に送信するかによってフォーマット変換を行う必要があります。

1)
両者の関係のなかだちをすること
2)
情報の根拠となるもので、記号化されたものを指す
3)
対象を抽象的に捉えた表象
4)
ここでは物理的なモノの意味
5)
誘導によって得られる考え方