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半導体

中学校の理科でサクッと出てくるけども、まったく意味のわからない半導体についての解説です。

電流から理解しよう

さて、突然ですが世の中にあるエネルギーはどんな場所から、どんな場所に移動するでしょうか。答えは簡単です。高いエネルギー源から、低いエネルギー源に移動します。例えば、熱湯は熱エネルギーを多く持っています。冷水は熱エネルギーを少ししか持っていません。なので、熱湯は高いエネルギー、冷水は低いエネルギーと言えます。熱湯と冷水を混ぜるとどうなるでしょうか。もともと熱湯だった箇所がよけいに熱くなることは絶対にありません。冷水の方に熱を奪われて、熱湯はだんだんと冷めていきます。また、冷水はだんだんとあったかくなっていきます。つまり、熱湯にあった高い熱エネルギーが冷水のほうに移動したと考えます。
電気エネルギーも同じなのです。電流と電子の流れが違うとかいう細かい話はおいておいて、電気エネルギーも高いエネルギーから低いエネルギーに移動していきます。さて、乾電池や電源コンセントを見てみると、1.5Vとか100Vなんて書いてあります。このV(ボルト)というのは電気エネルギーの発生源を示します。1.5Vというのは、他より1.5V電気エネルギーが高いぜと言っているだけですが、他より1.5V高いということは、導体1)で回路作って、電気エネルギーが無いところにくっつけると、エネルギーの差が生まれます。これを電位差といいますが、電位差が生じると電気が流れるのです。つまり、ただの差なのです。ですから、大きな電気回路になると、基準の0Vを決める必要があります(回路の途中の素子同士で微妙な電位差が生じたときに、逆流が起きることを防ぐ。必ず0Vと決めたGNDに向かって電気が流れるようにしないといけない)。この基準のことをGND(グランド)と言います。
乾電池などを使った豆電球を点灯させる回路では、電池のマイナス側が(暗黙の了解で)GNDとなります。電気は、高い電圧からGNDに向けて流れます。

電流の正体

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さて、電流の正体というのは電子です。電子というのは、マイナスの電荷を持った粒子です。導体には、自由に行き来できる自由電子というものがあり、電位差が生じると、自由電子がうねうねとところてんのように動き始めます。だいたい、イモムシ程度の速さでしか動かないと言われていますが、導体の自由電子は大量にあるので、ところてんが押し出るように電子が一瞬で回路の向こう側に到達するように見えるわけです。
(せめて電子のモデルを図として載せようよというツッコミはなし)

P型半導体

実は半導体というのは2種類あります。そのうちの1つがp型半導体。p型半導体のpはポジティブのpです。何がポジティブなのかというと、プラスなんです。(意味不明ですね)。p型半導体というのは、シリコンから電子を1個取った状態のものだけでできています。電子を1個取った状態ですので、電気的にプラスになります(詳しくはwikipesia参照)。このとき、もともと居た電子の代わりに穴ができます。この穴のことを正孔(ホール)と言います。

n型半導体

半導体のもう一種類がn型半導体です。nはネガティブのnです。何がネガティブなのかというと、マイナスなんです。(もうわかりますね)。n型半導体というのは、シリコンに電子を1個くっつけたものだけでできています。電子を余分にくっつけので、電気的にはマイナスになります(詳しくはwikipedia参照)。このとき、余計にくっつけられた電子が自由電子となります。

p型半導体とn型半導体をくっつける

p型半導体とn型半導体をくっつけてみます。p型半導体は+の電気をいっぱい持っているイメージ、n型半導体は-の電気をいっぱい持っているイメージで大丈夫です。この2つをくっつけてみるとどうなるか。

くっつけるとこうなります。では、これに電池を繋げると、プラスの電気はプラス極と反発しマイナスの方に向かいます。また、マイナスの電気はマイナス極と反発しプラスの方に向かいます。

左の図では、電池のマイナス極にプラスの電気が寄せられ、同じようにプラスの電気はマイナス極に寄って行きます。これでは、電気が流れません。反対に右の図では、プラスの電気は プラス極に押し出されるようにマイナス側に移動します。また、マイナスの電気はマイナス極に押し出されるようにプラス側に移動していきます。
電気は粒子が移動しないと流れないので、右の図のように電池を繋げないと電流が流れないことになります。つまり、p型半導体とn型半導体をくっつけると、1方向にしか電流を流さない素子になるということです。これを半導体(導体は両方向に電流が流れる)と言います。読んで字のごとく半分しか電気が流れませんね。また、p型半導体とn型半導体をくっつけた素子をダイオードと言います。ダイオードを回路で使用することで、プラスとマイナスが常時入れ替わっているような電源(交流電源)を整流し直流にすることができるようになります。また、発光ダイオードもダイオードの一種です。ダイオードの中でたまたま光っちゃったやつが発光ダイオード(LED)と呼ばれています。

トランジスタ

トランジスタとは、p型半導体、n型半導体を3つくっつけたものです。pnp型とnpn型とあります。

3つを組み合わせることで、両方向に流れなくなりますが、真ん中(PNP型であれば、N型)の半導体だけ超極薄にしておきます。こうすることで、なんやかんや2)で、真ん中(ベースという)に入力電流を流すことで、増幅された出力電流を取り出すことができます。例えば、忌野清志郎のトランジスタラジオという曲もありますが、ラジオ放送で使用される電波は人間の耳には聞こえませんね。聞こえるような音に増幅する必要があります。トランジスタを使うことで、ラジオ放送で使われる電波(微弱な信号)を人間の耳に聞こえるような音波に増幅することができるのです。トランジスタができる前は、鉄腕アトム(10万馬力で空を飛ぶロボット)みたいなロボットが使うような大きな真空管という部品を使っていました。トランジスタは微小な部品ですので、トランジスタラジオというと、小さくて軽くて音の良いラジオの代名詞だったのですね。
今でも、エレキギターのアンプなどで使われるパワーの必要なアンプには真空管が使用されます。トランジスタは、大きな電力には耐えられないのですね3)

スイッチング

さて、トランジスタの重要な役割としてスイッチングがあります。スイッチングとはスイッチするということです。スイッチにはONとOFFがあります。トランジスタはこのONとOFFを切り替えることができるのです。
と聞いただけで感動する少年少女はいないですよね。では、まず、スイッチとは何かを考えましょう。
家についているスイッチでもなんでもよいのでスイッチを考えてみてください。スイッチを付けるときはなんなのか。
https://www.irasutoya.com/ (一部改変)

上の図のように、暗がりで読書するとつらいですね。そうすると、自然に電気のスイッチに指を伸ばします。スイッチがONとなるとライトが点灯します。まず注目すべきは、人の目的とライトの目的が違うという点です。人の目的は「本を読むこと」ですが、ライトの目的は「部屋を明るくすること」ですね。ライトのスイッチを付けても、人の代わりに本を読んでくれるわけではありません。このように、目的が違うものをつなぎ合わせることをインターフェースと言います。このように、目的の違う箇所にはスイッチというインターフェースがあるわけです。また、人の思考としては「読書をしたい→あっそうだ明るくしよう」が自然だと思います。この「あっそうだ明るくしよう」という発想のことをアウトプットと言います。そのアウトプットを受けるものは、図ではスイッチですが、これをインプットといいます。インターフェースには必ずアウトプットとインプットがあります。
このことを回路に置き換えて考えてみましょう。大きな回路は小さな回路の集まりです。小さな回路は、それぞれ違う目的を持ったものです。違う目的の回路の集まりが大きな回路ですね。では、小さな回路がそれぞれ、独立して動いていては一つの製品になりません。先ほどのトランジスタラジオも「電波を拾う回路」「100V交流の電源を直流に直す回路」「電波を音波に増幅する回路」「チューニングする回路」といろいろあるわけです。これらの回路は互いにインターフェースを持っています。インターフェースがないと1つの製品として成り立たないわけですね。例えば、オートチューニングの仕組みを簡単に考えてみましょう。
ここでは、「電波を音波に増幅する回路」の消費電力が大きいのでなるべく節約したい、ということにします。まず「チューニングする回路」では自動で周波数を合わせるわけですが、チューニングがあった時だけ「電波を音波に増幅」したいわけです。つまり、周波数が合ったときにだけ「電波を音波に増幅する回路」をONにしたいわけです。そんなときに活躍する電子部品がトランジスタなんですね。トランジスタを回路の間に挟むことで、ある条件がそろった時だけ、電気を流すことができます。
これがスイッチング機能です。トランジスタは前項で示した通り増幅機能がありますので、ベースに「電流が流れる/流れない」という信号も増幅して扱いやすい電流にしてくれるわけです。上の例でいうと、「チューニングする回路」は周波数があったときに、トランジスタのベースに「周波数が合ったよ~」という電流をアウトプットします。そうすると、でっかい声で「ON!!」と言って、「電波を音波に増幅する回路」に大きな電流を流すわけですね。

半導体の詳しい構造などは省いていますが、この章の一番のキモは、半導体を接合したトランジスタというのを使うと「スイッチング」という便利な道具ができた、という点です。

1)
電流を流しやすい性質の物質。中学理科では、金属の特徴として電気を流しやすい電気伝導性を習う
2)
複雑な仕組み
3)
平成の発想